400冊超の英語絵本の紹介。英語学習者、絵本好きの方におすすめです。

男の子 女の子

男の子 女の子

No, David!

No, David! (Caldecott Honor Book)

だめよ、デイビッド デイビッド・シャノン文・絵  小川仁央訳 評論社

主なキャラクター
デイビッド 

いたずら満載、迫力満点。デイビッドの堂々やんちゃ道。
ママの声が響きわたるド迫力の絵本です。登場人物はデイビッドひとり。ママは声だけの出演です。やんちゃ盛りのデイビッドがやらかすあんなこと、こんなこと。日常のどのひとコマもあり余るエネルギーがはじけっ放しです。デイビッドの表情や仕草がユーモラスなイラストでこれでもか!と描かれています。NO!を連発するママの目はきっと三角になって髪の毛は逆立って...なんて手描き文字から想像がふくらみます。でもどんなにいたずらしようともママの愛はやさしく大きいのです。

主人公のデイビッドは作者自身がモデルです。5才の時に初めて描いた絵本がベースになっているそうです。当時、書けた言葉はnoとDavidの2つだけ。きっと始終言われていたんでしょうね。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
Come back here, David!
はだかんぼ大将デイビッド参上!

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David Goes to School.

David Goes to School

デイビッドがっこうへいく  デイビッド・シャノン文・絵  小川仁央訳 評論社

主なキャラクター
デイビッド

学校でも、やんちゃデイビッド全開。
「デイビッド!」。舞台を教室に移して、今度は先生の声が響きわたります。
「すわりなさい!」「授業中にガムをかまない!」「ちょっかいはやめなさい!」「よそ見しない!」「わりこんじゃダメ!」「しずかに!」
まんまる顔に大口あけて、デイビッドは学校でもやんちゃ道まっしぐら。先生に叱られっぱなしです。でも最後には「いい子ね」って金星のごほうびももらって意気揚々と家に帰ります。
先生の「Yes, David...」で終わったデイビッドの1日。でも明日はまた「No, David!」で始まるんでしょうね。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
That's it, Mister! You're staying after school!
机にクレヨンでお絵かき!先生の堪忍袋の緒がついにプチッ。

When Sophie Gets Angryー Really, Really Angry...

When Sophie Gets Angry - Really, Really Angry (Scholastic Bookshelf)

ソフィーはとってもおこったの! モリー・バング作  おがわひとみ訳  評論社

主なキャラクター
ソフィー

ワタシ、おこるとコワイよー。
ゴリラのぬいぐるみの取り合いになって奪われちゃった。おまけに床のトラックにけつまずくし。姉妹けんかが引き金になってソフィーの怒りが爆発。全身を怒りの炎に包まれて家をとび出し、やみくもに森へ走ります。
大きなブナの木に登ったソフィー。目の前にはゆったりと海が広がっています。そろそろ家に帰る時間のようです。

前半は強烈な赤が燃え盛ります。ブナの大木と穏やかな海は緑と青のなごみの世界。幼い少女の心象風景がくっきりと浮き上がってきます。コルデコット賞オナー賞受賞作です。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
She roars a red, red roar.
メラメラ燃える炎はゴジラも顔負け。

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ELOISE

Eloise (Eloise Series)

エロイーズ  ケイ・トンプソン文  ヒラリー・ナイト絵 井上荒野訳 メディアファクトリー

 
主なキャラクター
エロイーズ

NYのプラザホテル最上階に乳母と暮らす少女。
I am Eloise
I am six
I am a city child
I live at The Plaza
こんな自己紹介で始まるエロイーズの物語。6才の女の子でニューヨークの高級ホテル・プラザの最上階にイギリス人の乳母と暮らしています。友だちは、猫に似ている犬のウィーニーと亀のスキッパーディー。そんなセレブのお嬢ちゃまの日常といえば、大方の予想にたがわず、大人は眉をひそめ、ひっかきまわされ、翻弄されます。

エロイーズの物語が生まれたのは1955年(昭和30年)。セントラルパークに隣接する高級ホテルは紳士淑女が集う社交の場でした。そんな格式を誇るホテルを我が物顔で遊び回る女の子の物語は世界中で愛され、舞台となったプラザホテル(The Plaza)にはエロイーズ・スイートルーム(子ども部屋と保護者用の2部屋)まであります。人気ファッションデザイナーのベッツィー・ジョンソンがデザインを手がけ、エロイーズ・アンバサダーがお部屋までエスコートなど特典がいろいろ付いています。興味のある方はプラザのホームページをご覧ください。

当時のファッションも興味をそそります。ブラウスに吊りスカートのエロイーズの格好をはじめ、ホテルの宿泊客や従業員の服装やヘアスタイルが50年代の雰囲気たっぷり。家庭教師の男性が靴下用のガーターを付けているのにはビックリ。こんなファッション小物があったとは。

エロイーズの視点で語られる文章にはピリオドがありません。独特の言葉使いがおしゃまな女の子の個性をいきいきと伝えています。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
Sometimes I have a temper fit
But not very often
不機嫌なエロイーズの12変化が見ものです。

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The Paperboy

The Paperboy

The Paperboy Dav Pilkey作

主なキャラクター
新聞少年 愛犬

早朝の町は新聞少年の王国だ。
作者名を見てびっくり。デイブ・ピルキーってあの『Captain Underpants』の?あのハチャメチャおもしろ『スーパーヒーロー・パンツマン』シリーズを描いた?どちらを先に手に取ったにしても同じ作者とはとても想像がつきません。
公式サイトには本書にまつわる興味深いエピソードが書かれています。新聞配達の実体験を持つピルキーが一人の新聞少年と出会い、その姿に触発されて物語を思い立ちます。そのときは実を結ばなかった物語がある朝パッとひらめいて、15分で書きあげたそうです。絵本になった『The Paperboy』はコルデコット賞オナー賞を受賞しました。

まだ夜が明けきらないうちに新聞配達に出かける少年。愛犬をお伴に自転車で薄暗い町を走り回ります。少年がひたむきにペダルをこいでいるうちに空は少しずつ明るくなり、町は目覚めていきます。ラストシーンでは新聞少年と一緒に満ち足りた気持ちになります。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
And his empty red bag flaps behind him in the cold morning air.
すべての新聞を配り終わって空っぽのバッグがひらひら。

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THE THREE ROBBERS

The Three Robbers

すてきな三にんぐみ トミー・アンゲラー作  いまえよしとも訳 偕成社

主なキャラクター
3人の盗賊 ティファニー

少女に出会って盗賊3人組の波乱万丈。
黒いマントに身を包み黒い帽子を目深にかぶった3人の盗賊。鋭い目つきが帽子の下から覗きます。馬車が通ればコショウ噴霧器を馬にひと吹き。車輪を大斧で粉砕し、ラッパ銃で脅して貴重品を巻き上げます。山奥の隠れ家にはトランクいっぱいの金銀財宝がザクザク。
ある夜、いつものように馬車を襲ったら乗っていたのは1人の少女でした。親がいないティファニーは意地悪なおばの家に向かう途中でした。盗賊たちは少女を連れて帰ります。隠れ家でお宝を見たティファニーの「これは何に使うの?」という一言で3人組は思いもかけない行動に出ます。

1961年に発表されたトミー・アンゲラーの代表作です。表紙の3人組からどんなお話が繰り広げられるのか、わくわくさせます。ティファニーの登場で物語のトーンが変わり、意表を突く展開に。初めて読んだときは「えっ、こうなるの」と驚きました。
青と黒を基調に赤や黄色の色使いが印象的です。文は簡潔で読みやすく、文章量も多くありません。興味のある方はぜひどうぞ。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
Since there was no treasure but Tiffany, the thieves bundled her in a warm cape and carried her away.
ティファニーを大切そうにマントにくるむ盗賊。顔つきもやわらいでいます。

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MADELINE

Madeline (Picture Puffin)

げんきなマドレーヌ ルドウィッヒ・ベーメルマンス作  瀬田貞二訳 福音館書店

主なキャラクター
マドレーヌ クラベル先生

パリに暮らす元気な女の子。
In an old house in Paris that was covered with vines
lived twelve little girls in two straight lines.
ツタのからまるお屋敷の絵で物語は幕を開けます。そこに暮らすのは12人の女の子。何をするにもどこへ行くにもいつも2列ひとかたまり。なんで2列なの?マドレーヌは一体どの子?絵の素っ気なさときたら...。なんてわき上がる疑問を抱きつつ、いつの間にやらMADELINEの世界にどっぷりです。

雨が降ろうと雪がちらつこうとクラベル先生率いる2列の少女たちはパリの街を颯爽と。一番おチビさんで好奇心と元気いっぱいなのがマドレーヌです。シリーズ第1弾の本書ではマドレーヌが盲腸で入院します。お見舞いに行った11人の友だちの反応がほのぼの愛らしい。小粋なパリに暮らす小さなレディの物語は1939年に発表されて以来読み継がれてきたロングセラーです。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
But the biggest surprise by far―on her stomach was a scar!
盲腸の手術跡を友だちに自慢する?マドレーヌ。

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MADELINE AND THE BAD HAT

Madeline and the Bad Hat

マドレーヌといたずらっこ ルドウィッヒ・ベーメルマンス作  瀬田貞二訳 福音館書店

主なキャラクター
マドレーヌ ペピート クラベル先生

お隣さんは元気バクハツいたずら小僧。
In an old house in Paris that was covered with vines
lived twelve little girls in two straight lines.
おなじみの冒頭のフレーズでMADELINEの物語は始まります。今回は隣に越してきたスペイン大使の息子ペピートが登場します。原題のbad hat(厄介な人物、トラブルメーカー)はズバリこのおぼっちゃまのこと。マドレーヌは早々に"It is evident that This little boy is a Bad Hat!"ときっぱり宣言。いたずら小僧は女の子たちにあれこれちょっかいを出し総スカンを食らいます。そのいたずらがとんでもない事態を引き起こし、危機一髪のペピートをクラベル先生とマドレーヌが助けます。

この出来事をきっかけにペピートはすっかり心をいれかえます。"You are the world's most wonderful boy!"とマドレーヌからおほめの言葉も贈られます。やんちゃ坊主は本物のおぼっちゃまに生まれ変わったようです。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
He built himself a GUILLOTINE! He was unmoved by the last look
The frightened chickens gave the cook.
庭にはペピート手作りのニワトリ用ギロチンが。すまし顔でチキン料理にパクつきます。

APT. 3

Apt. 3 (Picture Books)

アパート3号室 エズラ・ジャック・キーツ 作  きじまはじめ訳  偕成社

主なキャラクター
サム ベン 男性

ハーモニカの音に導かれて少年が出会ったものは。
アパートのどこからか聞こえてくるハーモニカ。もの哀しい音色に惹かれ、サムは演奏の主を捜しに行きます。電灯が切れた廊下には粗大ごみのマットレス。煙草や料理の匂いが漂い、言い争う声や赤ん坊の泣き声が響くアパートを歩き回るサムとベンの兄弟。思いがけず3号室の住人に部屋に招かれます。そこに住んでいるのは盲目の男性でした。驚いたことに男性は兄弟を知っていました。おまけにサムの秘めた恋心もズバリ。声高に言い返すサムに男性は変幻自在なハーモニカの音色で応じます。

うらぶれたアパートを舞台に、ストーリーも色調も暗く沈んだトーンが全体をおおっています。そうして迎えるクライマックス。男性が奏でるハーモニカの音色が歓喜の叫びとなって絵本から立ち上がってきます。重々しさを吹き飛ばすラストの爽快感が鮮烈です。『APT. 3 』という素っ気ないタイトルとハーモニカの余韻が忘れられない1冊となりました。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
He played purples and grays and rain and smoke and the sounds of night.
Sam sat quietly and listened.
男が奏でるハーモニカにサムはじっと聞き入ります。

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The Blue Balloon

The Blue Balloon

あおいふうせん ミック・インクペン作  角野栄子訳  小学館

主なキャラクター
男の子 キッパー

青い風船に夢をのせて。
犬のキッパーが初めて登場する絵本です。キッパーが庭で青い風船を見つけてきます。男の子がふくらますとどんどん大きくなって大きくなって...。ふたりで引っ張りっこするとどんどん伸びて伸びて,,,。ギュッてしても乗っかっても蹴っても、へっちゃら。キッパーの噛みつき攻撃も歯がたちません。そして不思議な青い風船はふたりを素敵な散歩に連れ出してくれます。

風船が大きくなったり伸びたりする楽しい仕掛け絵本です。4倍サイズの青い風船は迫力いっぱい。読み聞かせをしたら最後のページできっと歓声が上がりますよ。
男の子がオーバーオールにつけているブタのバッジ。場面によって表情が変わる遊び心も小さなお楽しみ!

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
The other day it disappeared completely......and when it came back it was square!
四角い風船に男の子もキッパーもブーちゃんもぴっくり。

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Jim and the Beanstalk

Jim and the Beanstalk (Puffin Picture Books)

ジムとまめの木 レイモンド・ブリッグズ 作  矢川澄子訳 評論社

主なキャラクター
ジム 巨人

豆の木を登ったジムが巨人と出会って...。
ジャックと豆の木ならぬジムと豆の木です。レイモンド・ブリッグズ流のスパイスがたっぷり効いた痛快パロディーです。
朝起きたら窓の外に天をつく木がニョキ。ジムが登っていくとてっぺんの城には巨人が住んでいました。なんと彼はジャックにしてやられた巨人の息子でした。年をとった巨人は老眼になり歯は抜け髪も薄くなっています。そんな巨人のためにジムは顔のサイズを測り眼鏡屋へひとっ走り。特別あつらえの眼鏡に巨人は大喜びです。次は入れ歯を作りに歯医者へ。若かりし頃の自慢の赤毛は特注のかつらで元通り。すっかり元気になった巨人はジムに意味ありげな視線を送ります。

最後は巨人の笑い声が響いてジ・エンド。子どもの頃に正統『ジャックと豆の木』に親しんだ大人に贈る笑いと哀愁漂う絵本です。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
"Is your name Jack?" he asked.
"No," said Jim, "it's Jim."
"Did you come up a beanstalk?" asked the Giant.
"I came up some sort of plant," said Jim.
"It's that beanstalk again," said the Giant.
現れた少年に名前を尋ねる巨人。Jackでなくて良かった!

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Sitting in My Box

Sitting in My Box (Picture Puffins)

Sitting in My Box Dee Lillegard 文  Jon Agee 絵

主なキャラクター
男の子 動物たち

小さな箱に1人と5匹がぎゅうぎゅう。
からっぽの段ボール箱があればジャングルにひとっ飛び。どんな動物に会えるかな。
男の子が段ボール箱に入って『野性動物』の本を読んでいます。するとキリンがやってきて「入れて」って。体をずらして入れてあげます。今度はゾウが「入れて」。ヒヒにライオンにカバも加わって箱は満杯。そこへ1匹のノミが飛び込んできました。

図体の大きな動物が小さな段ボールにぎゅうぎゅう詰めのおもしろさ。居座る姿がユーモラスに描かれます。"Let me, let me in."のおまじないを唱えて段ボール仲間に加わってみませんか。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
"Someone has to go."
"Not me."
「だれか出てって」と男の子が言っても口々に「やだ」。

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DOGGER

Dogger (Red Fox picture books)

ぼくのワンちゃん シャリー・ヒューズ 文・絵  あらいゆうこ訳  偕成社

主なキャラクター
デイブ ベラ

ぼくのドガーがいなくなっちゃった。
デイブはどこへ行くにもぬいぐるみの犬ドガーといっしょ。おもちゃの車に乗せてあげたり寒いときには毛布にくるんだり。眠るときももちろんいっしょです。ところがある日、ドガーが行方不明になってしまいます。家族みんなで捜しますが、ベッドの下にも台所にもおもちゃ箱の中にもいません。その翌日、お姉ちゃんのベラの小学校でバザーが開かれました。傷心のデイブの目に飛び込んできたのはおもちゃコーナーで売られているドガー!自分のおこづかいでは足りません。パパとママは見当たらず、デイブはベラに助けを求めます。でもその間に女の子がドガーを買ってしまいました。

古ぼけて所々毛が抜け落ちているドガー。片耳がピンと立ってもう片方は垂れているのがご愛嬌です。どんなにくたびれていてもデイブにとってはかけがえのない宝物です。弟のピンチを救ったお姉ちゃんが頼もしくて素敵です。

イギリスの学校のバザーの様子が興味深いです。服や帽子のリサイクル、輪投げにココナツ射的、花屋にケーキなどのお店が並びます。仮装パレード、卵運び競争、手押し車競争、お父さんレース、二人三脚と楽しさ盛りだくさんです。
1977年にケイト・グリーナウェイ賞を受賞した本書は2007年に同賞オールタイムベスト作品に選ばれています。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
At bed-time he said:"I want Dogger."
But Dogger was nowhere to be found.
ドガーがいない!パジャマ姿のデイブの茫然とした顔...。

PETER'S CHAIR

Peter's Chair (Picture Puffins)

ピーターのいす エズラ・ジャック・キーツ 文と絵  木島始訳 偕成社

主なキャラクター
ピーター

新米お兄ちゃんの戸惑いと成長。
妹が生まれてからピーターの生活は変わってしまいました。家の中で遊んでいると「静かに」って言われるし、自分が使っていた揺りかごもベビーベッドもハイチェアもピンク色に塗られてしまうし。ピーターは愛犬のウィリーと家出することにしました。クッキーとワニの人形と自分の赤ん坊の頃の写真と、まだピンクに塗られていない青いイスを持って。でもそのイスに座ろうとしても今のピーターには小さすぎました。

家に戻ったピーターはママにちょっとしたいたずらを仕掛けます。してやったりの笑顔が心のモヤモヤを晴らしてくれたようです。ピーターはパパと並んで大人用のイスに座ります。成長を自覚し受け入れたピーターのお兄ちゃんぶりが清々しいラストシーンです。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
But he couldn't fit in the chair. He was too big.
青いイスに座ろうとしたピーターを見つめるウィリーとワニ、そして赤ん坊のピーター(の写真)。

IRA SLEEPS OVER

Ira Sleeps over

アイラのおとまり  バーナード・ウェーバー 文と絵  前沢明枝 訳 徳間書店

主なキャラクター 
アイラ レジー

初めてのおとまりはわくわく、ドッキドキ。
隣に住む仲よしの男の子レジーから「とまりにおいでよ」と誘われてアイラは大喜びです。初めてのおとまりにわくわくしてたら、お姉ちゃんが「テディベアはどうするの。いつもいっしょに寝てるでしょ」って。テディといっしょにおとまりする?それともひとりで行く?アイラの心は振り子のように揺れ動きます。パパとママは連れていけばって言うけれど、ぬいぐるみだなんてレジーに笑われるかもしれない。どうしよう、どうしよう...。

初めてのおとまりに期待と不安が入り混じる幼い心がほのぼのと描かれています。アイラをへこませるちょっと意地悪なお姉ちゃん。パパとママはやさしく見守ります。居間やテラス、食卓で繰り広げられる家族の風景の中で少女の心情がいきいきと表現されています。

レジーが考えたお遊びプランが楽しくて興味をそそります。まず自慢のjunk collection(がらくたコレクション)ショ―。ボトルのキャップやガムの包み紙も大切なお宝です。wrestling match(プロレスごっこ)pillow fight(枕投げ)magic tricks(手品)checkers(ボードゲーム)dominoes(ドミノゲーム)など盛りだくさん。しかも夜だからオバケの話も。

真っ暗な部屋の中でレジ―が語るオバケの話。だんだん怖くなってきます。こんなときは、だれかがそばにいてくれるといいのに。心強いだれかが...。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
At last, it was time to go to Reggie's house.
"Good night," said my mother.
"Good night," said my father.
"Sleep tight," said my sister.
I went next door where Reggie lived.
バッグを持って、みんなに「おやすみ」して、アイラのおとまりの始まり始まり。

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Brave Irene

Brave Irene

ゆうかんなアイリーン ウィリアム・スタイグ 文と絵  おがわえつこ訳 セーラー出版

主なキャラクター
アイリーン

吹雪なんかに負けるものか、ぜったいに。
お母さんが仕立てていたドレスがやっとできあがりました。でも体調が悪化して公爵夫人のお屋敷まで届けることができません。今夜の舞踏会に間に合わせないといけないのに。「わたしが行ってくる!」とアイリーン。ドレスを入れた大きな箱を抱えて、降りしきる雪の中へ歩き出します。

雪はどんどん降り積もり、風は勢いを増していきます。「お母さんのドレスをぜったいに届けなきゃ」と、吹雪に翻弄されながらもアイリーンは進んでいきます。ところが、必死に抱えていた箱が飛ばされて中のドレスが吹き飛ばされてしまいます。荒れ狂う吹雪の中で、空箱を抱えて茫然とするアイリーン。少女の苦難はまだまだ続きます。

絵本の半分以上にわたり、大きな衣装箱を抱えて吹雪の中で奮闘するアイリーンの姿が描かれます。口をぎゅっと結び、踏ん張る気丈さ。ドレスを失い途方に暮れる孤独。足を踏み外し、埋もれた雪の中から立ち上がる負けん気。まさに「Brave Irene」(勇敢なアイリーン)ですね。
そんな勇気ある少女は、もちろん無事にドレスを届ける役目を果たします。

お母さんがアイリーンに使う呼びかけの言葉「dumpling(ダンプリング)cupcake(カップケーキ)pudding(プリン)」は、みんなお菓子。母と娘の愛情がさり気なく伝わってきます。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
"Go home!" the wind squalled. "Irene...go hooooooome..."
"I will do no such thing," she snapped. "No such thing, you wicked wind!"
「カエレ~」と不気味な風の叫び。アイリーンも負けてはいません。

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THE Gardener

The Gardener (Caldecott Honor Book)

リディアのガーデニング  サラ・スチュワート文  デイビッド・スモール絵 
福本友美子訳 アスラン書房

主なキャラクター
リディア ジムおじさん

少女が咲かせた美しい花々。
経済不況が人々の暮らしに暗い影を落とす1930年代のアメリカを舞台に、明るく前向きな少女の姿を描いた作品です。
お父さんが失業し、リディアは都会でベーカリーを営むジムおじさんの元に身を寄せることになりました。無愛想でニコリともしないおじさんとの生活の中で、リディアは自分なりの楽しみを見出します。田舎育ちの少女の特技は草花を育てること。実家から送られてくる球根や種は生活に彩りと潤いをもたらしてゆきます。そして小さな園芸家は、誰にも見向きもされない場所を「秘密の花園」に変えてしまいます。

物語はリディアが綴る手紙を中心に展開していきます。おじさんに心を寄せる少女と、職人気質のおじさんの人物像が印象的です。眉間にシワのジムおじさんはいかにも気難しそう。にこやかな表情はひとつもありません。だからこそ、ラストシーンは胸に熱く迫ります。リディアが丹精込めた花々は、見る者の心にいつまでも咲き続けるにちがいありません。

作者のサラ・スチュワートとイラストレーターのデイビッド・スモールは夫婦です。妻と夫の共作は1998年のコルデコット賞オナー賞を受賞しています。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
P.S. I saw Uncle Jim almost smile today. The store was full(well, almost full) of customers.
実家宛ての手紙の追伸には、いつもジムおじさんの「笑顔」について書かれています。リディアの育てた花々が増えていくにしたがってパン屋のお客さんも増えているみたい。

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Weslandia

Weslandia

ウエズレーの国  ポール・フライシュマン 文  ケビン・ホークス絵 千葉茂樹訳 あすなろ書房

主なキャラクター
ウェスリー

そうだ、ぼくの文明をつくろう。
変わり者でいじめられっ子の少年が、夏休みに自分の文明をつくりあげる痛快な作品です。
町でただ一人、ピザとソーダが大嫌い。男子でただ一人、頭半分そり上げヘアを拒否。得意なのはいじめっ子から素早く逃げること。そんなウェスリーが夏休みの自由研究に思いついたのが、自分の文明をつくることです。
掘り起こした庭の一画に、風が種を運んできました。芽が出て、見知らぬ植物がぐんぐん育っていきます。果実は食用に、葉や根や皮も残らず利用します。茎を素材にした織物で帽子や衣服も作りました。独自のスポーツ、文字、言葉も考案しました。クラスメイトのあざけりは好奇心に変わり、ウェスリーの元に集まるようになります。「Weslandia」―ウェスリーはこの地をこう名付けました。

庭の片隅で始まった「Weslandia」の文明は、夏休みの冒険心をわくわくかきたてます。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
He passed the evenings playing a flute he'd fashioned from a stalk or gazing up at the sky, renaming the constellations.
夜はハンモックに揺られながら、手作りのフルートを吹いたり星空を眺めたり。うらやましい。

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BIG SISITER and LITTLE SISTER

Big Sister and Little Sister

ねえさんといもうと シャーロット・ゾロトウ文  マーサ・アレキサンダー絵 
やがわすみこ訳 福音館書店

主なキャラクター
姉 妹

姉妹って、やっぱりいいね。
せつなさとほろ苦さが入り混じったbig sister(姉)とlittle sister(妹)の物語です。お姉ちゃんはいつも妹のそばにいて細やかに面倒をみています。道路を渡る時は手をつないで、野原で遊ぶ時は妹が遠くへ行かないように目配り気配り。泣き顔になれば抱きしめてハンカチを渡してくれます。
何でもできて何でも知ってるお姉ちゃん。でも、ちょっとうっとうしい。一人になりたくて妹はこっそり家を抜け出しデイジーが繁る野原へ。まもなく捜し回るお姉ちゃんの声が聞こえてきました。

草花の中に身をひそめる妹と、遠ざかりまた近づく姉の声。デイジーの野原のかくれんぼは、少女ふたりがいじらしくて愛おしくて。淡い色彩のイラストが姉妹の絆を繊細に描いています。

作者のシャーロット・ゾロトウには6つ違いの姉がいて、この作品は実体験に基づいて生まれたそうです(ホームページ参照)。そういえば作中の姉と妹もそのくらいの年齢差を感じさせました。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
She thought about big sister saying,
"Sit here."
"Go there."
"Do it this way."
"Come along."
お姉ちゃんはいつも「しなさい」ばっかり。野原でひとり、頭に浮かぶのはお姉ちゃんのこと。

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WINGS

Wings

WINGS Christopher Myers 文と絵

主なキャラクター
イカロス・ジャクソン

背中の翼を羽ばたかせ。
転校生のイカロスの背には大きな翼が付いていました。学校中の注目の的、そして噂の的です。他の生徒が授業に集中できないと教室から退出を命じられます。翼をはためかせ舞い上がれば目立ちたがりと非難されます。周囲に受け入れられない異形の少年は学校から飛び去ってゆきます。そんなイカロスををそっと見守る一人の少女がいました。彼女は素直な賞賛の気持ちをイカロスに伝えます。

この作品に込めた作者の思いがプロフィールにこう記されています。
Every child has his own beauty, her own talents. Ikarus Jackson can fly through the air;
I want kids to find their own set of wings and soar with him.

再び飛翔するイカロスの翼は力強く羽ばたいています。自分のちからを見つけた誇りと喜びが伝わってくるようです。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
I told him what someone should have long ago:
"Your flying is beautiful."
少女のひと言がイカロスをどれほど勇気づけたことでしょうか。

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Me...Jane

Me . . . Jane (Mcdonnell, Patrick)

どうぶつがすき  パトリック・マクドネル 文と絵 なかがわちひろ訳 あすなろ出版

主なキャラクター 
ジェーン ジュビリー

小さなジェーンは世界のジェーンへ。
チンパンジーの研究で知られる霊長類学者ジェーン・グドールの少女時代を描いた絵本です。
ジェーンの親友はぬいぐるみのチンパンジーのジュビリー。どこへ行くにもふたりは一緒です。鳥の巣作りやリスを観察したり、ニワトリ小屋に隠れて卵が生まれるようすを見守ったり。木登りが得意なジェーンは、ビーチと名付けたお気に入りの木の上で「ターザン」の本を繰り返し読みます。アフリカで動物たちと暮らしてみたい。そんな夢がふくらんでゆきます。そしてある日、目覚めると...。

絵本のトビラにはジュビリーを抱いている少女時代のグドール博士の写真が掲載されています。そのジュビリーは70年以上たった今も傍らにいるそうです。
パトリック・マクドネルの挿絵は愛らしくシンプル。ひとりの少女の物語にやさしく誘います。2012年のコルデコット賞オナー賞を受賞しています。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
a life living with, and helping, all animals.
ジャングルの中で、気分はすっかり「ターザン」のジェーンです。

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How I Learned Geography

How I Learned Geography

おとうさんのちず ユリ・シュルヴィッツ 文と絵  さくまゆみこ訳 あすなろ書房

主なキャラクター
男の子

1枚の地図があれば世界のどこへでも。
DAWN 』で知られるユリー・シュルヴィッツの幼少時代を描いた自伝的作品です。
戦火を逃れ、着の身着のままで異国に暮らす一家。小さな部屋を他人と分け合い、食事にも事欠く日々です。ある日、パンを買いに行った父がやっと戻ってきました。でも抱えていたのはパンではなく世界地図でした。

カラフルに色分けされた地図は壁一面を占めるほどです。それを眺め、描くことが男の子の日課になりました。やがて地図に記されたエキゾチックな名前でライムを作るようになります。

Fukuoka Takaoka Omsk,
Fukuyama Nagayama Tamsk,

何度も口ずさんでいると、あら不思議、砂漠へひとっ飛び。波打ち際をかけっこしてる。ジャングルでパパイヤをもぐもぐ。お父さんの地図に導かれて、男の子は世界中のどこへでも思いのまま。
さまざまな色彩が躍る想像の国々は男の子の喜びと興奮をいきいきと伝えています。

シュルヴィッツ一家は第二次大戦時、ポーランドのワルシャワを逃れ、中央アジアのトルキスタン(現カザフスタン)に暮らしていました。当時、作者は4、5才だったと振り返っています。
一夜のおなかを満たすパンではなく地図を買ったお父さん。父に捧げられた絵本は2009年コルデコット賞オナー賞を受賞しました。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
I came to a city of tall buildings and counted zillions of windows,
falling asleep before I could finish.
うわー、たかい。まどがいっぱい。ヒツジじゃなくて窓を数えておやすみなさい。

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The Tenth Good Thing About Barney

The Tenth Good Thing About Barney

ぼくはねこのバーニーがだいすきだった ジュディス・ボースト 文 エリック・ブレグバッド 絵 
なかむらたえこ訳 偕成社

主なキャラクター
男の子

こんなトコもあんなトコも、大好きだったよ。
バーニーが死んじゃった。男の子は飼い猫の死に悲しくて泣くばかりです。庭の木の根元に埋めてお葬式をすることになりました。バーニーのどんなところが好きだったのか、そのときに10個おしえてねとお母さんから言われています。男の子は楽しい思い出を語り始めます。
ゆうかんだったよ。おりこうで、おもしろかった。かわいくて、だきしめたくなるんだ。でも、あと1つが浮かんできません。

原題にある「the tenth good thing」(10個目の好きなところ)にたどり着くまでの男の子の時間が、ゆったりと流れていきます。お葬式にきてくれた隣のアニーとクッキーを食べながら、バーニーは天国にいるか庭にいるか言い合いに。庭に花の種をまくお父さんを手伝いながらバーニーのことを考えます。お昼はサンドイッチを木の下で食べました。そして夜、ベッドの中でお母さんに告げた「10番目」。バーニーは男の子の心の中にがすっと収まったようです。幼い息子を見守る両親のほどよい距離感が印象的です。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
Heaven, said Annie, heaven. So there! The ground, I told her, the ground. You don't know anything.
仲よくクッキーを分け合っていたのに、ケンカになっちゃった。

King Jack and the Dragon

King Jack and the Dragon

おうさまジャックとドラゴン  ピーター・ベントリー 文 ヘレン・オクセンバリー 絵 
灰島かり訳 岩崎書店

主なキャラクター
ジャック ザック キャスパー

きょうはみんなでドラゴン退治だ。
男の子が3人集まれば、とりで作りのはじまりだ。ダンボールにシーツに棒が数本。旗を取り付けて、とりでのできあがり。跳ね橋だってあるよ。さあ、ドラゴン退治にいくぞ!

王冠をかぶったジャックはザックとキャスパーを従えて意気揚々。みんなでドラゴンやカイブツを撃退します。そんな3人に近づき連れ去ってしまう巨人の姿。ひとり残された王さまジャックにも大きな影が近づいてきます。

秘密基地にドラゴン退治、忍び寄る巨人の気配なんて、こども心を躍らせる冒険がギュッとつまっています。ジャック、ザック、キャスパーには年齢などの具体的な記述はありません。そこが腕の見せ所とばかりに、ヘレン・オクセンバリーが描く3人組のなんて元気で魅力的なことでしょうか。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
the THING!
やつがやってきた。

Dreams

ゆめ エズラ・ジャック・キーツ きじまはじめ訳  偕成社

主なキャラクター
ロベルト

眠れない男の子が見たものは。
ロベルトは学校で紙のネズミを作りました。そしてそれをアパートの窓台に置きます。寝苦しい夏の夜、ロベルトはなかなか眠ることができません。ベッドを抜け出し、窓から下を見ると、そこで目にしたものは...。
真夏の夜に繰り広げられる思いがけないドラマ。ダイナミックな画面構成で、ロベルトのドキドキが伝わってきます。吹けば飛ぶような紙のネズミが果たした役割が秀逸です。

トビラの献辞に3名の日本人名が記されています。「おはなしキャラバン」で活動された方々のようです。キーツとどのような親交があったのか、興味深いですね。

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