400冊超の英語絵本の紹介。英語学習者、絵本好きの方におすすめです。

ロバート・マックロスキー

絵本作家 ロバート・マックロスキー

マックロスキー描く古き良きアメリカにはゆったりした時が流れています。
日々の暮らしや自然を丹念に描いた作品は時代を越えて愛されています。

Make Way for Ducklings

Make Way for Ducklings (Picture Puffins)

かもさんおとおり  ロバート・マックロスキー作   わたなべしげお訳  福音館書店

主なキャラクター
カモの一家 警官のマイケル

ボストンの街でカモさん一家のお引っ越し。
アメリカはボストン版の「カルガモのお引っ越し」です。カモのマラード夫妻(mallardは英語でマガモ)が巣作りの場所を探してボストンの街を飛び回っています。チャールズ川の中洲に手頃な場所を発見。8羽の元気なヒナがかえりました。ある日、とうさんが1週間遠出することになり、一家はパブリック・ガーデンの池で待ち合わせをします。かあさんは子ガモたちに泳ぎやもぐり、地面の歩き方を教えます。そしていよいよ父さんの待つ池へ向かいます。
かあさんを先頭に一列になってボストンの街を行進する子ガモたち。道路の横断は警官のマイケルが交通整理の助っ人を買って出ます。車がストップし歩行者の見守る中、一家はビーコン通りを渡ってパプリックガーデンへ。

パブリックガーデン、高級住宅街ビーコンヒル、マサチューセッツ州会議事堂、ルイスバーグ広場、チャールズ川、マウントバーノン通り、チャールズ通りなど本書にはボストンの名所が登場。カモさん一家とボストン観光が楽しめます。

1941年の発表以来、ボストン市民のみならずアメリカで、世界中で愛されてきた絵本です。パブリックガーデンではカモさん一家の彫刻が来園者を迎えます。また毎年母の日に開催されるDuckling Day Paradeではカモの扮装をした子どもたちがパレードを行います。

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BLUEBERRIES FOR SAL

Blueberries for Sal (Picture Puffins)

サリーのこけももつみ ロバート・マックロスキー作  石井桃子訳  岩波書店

主なキャラクター
Sal お母さん クマの母子

少女と子グマのお母さんさがし。
Salとお母さんはブルーベリーを摘みにやってきました。冬の保存食として瓶詰めにするためです。同じ場所に冬眠前のクマの親子もやってきました。ブルーベリーに夢中になって、いつの間にやら2組の母と子ははぐれてしまいます。そしてふたりの子どもが追いかけたのは違うお母さんでした。Salを見て目が点になった母さんグマ。子グマの姿に息をのむSalのお母さん。ふたりの母は大人の分別でその場を離れます。

表情や仕草の一つひとつが繊細なタッチで描かれ、登場人物が実にいきいきしています。モノトーンの絵に心地良いリズムの文章が添えられ、豊かな物語の世界を楽しませてくれます。1948年以来、60年以上にわたって読み継がれているロングセラーです。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
Little Sal picked three berries and dropped them in her little tin pail...kuplink,kuplank,kuplunk!
3粒のブルーベリーのかわいい音はSalの小さな手が奏でる音楽みたい。

One Morning in Maine

One Morning in Maine (Picture Puffin)

海べのあさ ロバート・マックロスキー作 石井桃子訳 岩波書店

主なキャラクター
Sal ジェーン お父さん お母さん

成長の階段をすこやかにワンステップ。
『BLUEBERRIES FOR SAL』の4年後に発表されたSalの物語です。ドラマチックな出来事が起こるわけではありません。乳歯が抜けるエピソードを軸に少女の成長がいきいきと描かれています。自身も2人の娘の父親であった作者の温かなまなざしが作品全体を通して感じられます。

朝の歯磨きで1本がぐらぐらしているのに気づいたSal。大人の歯に生え替わるとお母さんから聞き、わくわく。抜けた歯を枕の下に入れて願い事をするのが待ち遠しくてたまりません。鳥やアザラシに向かって誇らしげに“I have a loose tooth!”と叫ぶ姿の微笑ましいこと。ところがお父さんのハマグリ掘りを手伝っている間に歯がポロリ。抜けた歯はどこにも見当たりません。

文中にbig girlという表現が何度も出てきます。
That means that today you've become a big girl.
(歯がぐらぐらして大騒ぎするSalにお母さんがbig girl宣言)
I'm a big girl, and I can help him dig a lot of clams, fast.
(お父さんの手伝いをしようと張り切るSal)
But you are growing into a big girl, and big girls don't cry about a little thing like that.
(抜けた歯が見つからず悲しむSalをお父さんが慰めます。)
I'll take good care of Jane. I'm a big girl and I can watch so she doesn't tumble into the water.
(妹のことは私に任せてと、Salはすっかり頼もしいお姉ちゃんです。)
「big girl」の称号を聞くたびに口にするたびにSalは成長していくようです。

Time of Wonder

Time of Wonder (Picture Puffin)

すばらしいとき ロバート・マックロスキー作  わたなべしげお訳 福音館書店

メイン州の島の海、空、風。
舞台はアメリカ東北部に位置するメイン州の島。夏の間、両親とともにそこに滞在している2人の姉妹を軸に、島の自然や暮らしを細やかに描いた作品です。朝もやの海岸や森。セーリングや海水浴を楽しむ子どもたち。夜のボート遊び。のどかな日常を破るハリケーンの緊迫。台風一過の青空の下、なぎ倒された大木は格好の遊び場に変わります。

穏やかで変化に富んだ島の生活が落ち着いた色調の水彩画でいきいきと描かれています。ロバート・マックロスキーにも2人の娘がいてメイン州の島で夏休みを過ごしたそうです。そうした体験から生まれたであろう一瞬一瞬をいとおしむような視線を感じました。
60ページを超える作品で文章量は多めです。youで語られる本文は詩的なリズムを刻み読み応えがあります。作者にとって初のカラー絵本となる本作で2度目のコルデコット賞を受賞しています。

BURT DOW, DEEP-WATER MAN

沖釣り漁師のバート・ダウじいさん―昔話ふうの海の物語
ロバート・マックロスキー文と絵 わたなべしげお訳 童話館出版

主なキャラクター
バート・ダウ

ポンコツ釣り船でじいちゃんのアドベンチャー。
元漁師が海で繰り広げる痛快、豪快な冒険談です。第一線を退き、のんびり気ままに暮らすバート・ダウ。手塩にかけたポンコツ船『Tidely Idlely』に乗り、ペットのカモメをお供に沖へ釣りに。ところがいつもと違って1匹も釣れません。どうやら海の中の何かが魚たちを怖がらせているような...。すると突然、グイッと引きが。とんでもない大物がかかりました。そのうち天候が怪しくなり、風と波に翻弄されるバート・ダウがとったまさかのサバイバル術とは。

マックロスキーと言えば代表作『Make Way for Ducklings』をはじめ、動物や子ども、自然などをほのぼのと描いた作品で知られます。本作では愛すべきじいちゃんキャラを主人公に据え、ストーリーが驚きの急展開。黄色いペンキでべたべたしたりバンドエイドをぺたぺたしたり、バートじいちゃんのお茶目が思いっきりはじけています。

THE MAN WHO LOST HIS HEAD

The Man Who Lost His Head (New York Review Children's Collection)

あたまをなくしたおとこ クレール・H・ビショップ文  ロバート・マックロスキー絵 
もりうちすみこ訳 瑞雲舎

主なキャラクター
おとこ 

頭をなくしたおとこの悲喜劇。
朝、目が覚めたらなんと頭が、な、ない! 一体どこへ消えてしまったのでしょう。おとこは家中を捜します。ベッドの下にも枕の下にもゴミ箱の中にもありません。そういえばお祭りに行ったっけ。おとこは捜しに出かけることにします。でも人目があるし頭なしでは困ります。そこでカボチャに穴を空けて顔を作り、帽子をかぶってお祭り会場に向かいます。なくした頭は見つかるでしょうか。

荒唐無稽な物語を上質なユーモアで包み、極上の絵本に仕立てているのがロバート・マックロスキーの挿絵です。ハロウィンのようなカボチャ頭がネクタイを締めスーツで歩いています。次は太めのニンジンみたいなパースニップ(アメリカボウフウ)頭です。どちらの頭もしっくりきません。そりゃそうだ。最後に作ったのが木製の頭。お面のように顔を彫り、サンドペーパーをかけて仕上げます。スーツ姿にも違和感のない上出来の頭です。

この作品が出版されたのは1942年。当時のアメリカのお祭りの様子が楽しく描かれています。万病に効くという「SNAKE OIL」はまるでガマの油。「双頭の牛」「犬顔少年」「人魚のミニー」「火吹きのピート」などの見世物もずらりと。輪投げにメリーゴーランド、移動動物園も。そんなにぎわいのなかでポツンとベンチに座る頭をなくしたおとこに、少年が声をかけます。ここから2人のかけ合いで物語はテンポにのって展開していき、パンチの効いたクライマックスへ。
なくした頭の謎解きは、なーるほど。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
"I am ahead? said the man, distressed. "Ahead! Ahead! Did you say a...head?"
"What is the matter with you? Did you not understand?" asked the village people.
And they shrugged thier shoulders, and turned their backs, and said to one another;
"The poor man! He must have lost his head!"
カボチャ頭のおとこが村人に出会う場面。headに引っかけたトンチンカンなやりとりが笑いを誘います。


Robert McCloskeyロバート・マックロスキー)PROFILE
1914年~2003年/アメリカ・オハイオ州生まれ。ボストンのべスパー・ジョージ美術学校で学ぶ。42年に『Make Way for Ducklings』(かもさんおとおり)でコルデコット賞受賞。58年には『Time of Wonder』(すばらしいとき)で2度目のコルデコット賞に輝く。

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