400冊超の英語絵本の紹介。英語学習者、絵本好きの方におすすめです。

バーバラ・クーニー

絵本作家 バーバラ・クーニー

素朴で懐かしい風景が郷愁を誘います。
自然に寄り添う人々の暮らしをバーバラ・クーニーは温かく見守ります。

Miss Rumphius

Miss Rumphius

ルピナスさん―小さなおばあさんのお話 
バーバラ・クーニー文・絵  掛川恭子訳 ほるぷ出版

主なキャラクター
アリス・ランフィアス

さあ、世界をもっと美しくしよう。
アリス・ランフィアスという1人の女性の生涯を描いた絵本です。幼いアリスは祖父と3つの約束をします。大きくなったら世界中を旅すること、海辺に住むこと、そして世の中をもっと美しくすること。約束通りアリスは世界各地を旅し、海辺の家に腰を落ち着けます。体調をくずしベッドに伏せっていたアリスを慰めたのは庭に植えたルピナスの花でした。風に運ばれたルピナスの種は別の場所にも花を咲かせていました。3つ目の約束を果たすときがやっと来たようです。

You must do something to make the world more beautiful.

祖父からアリスへ、そして次の世代へこの言葉がバトンタッチされていきます。この物語と出会った一人ひとりの読者にもきっと受け継がれていくのではないでしょうか。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面

Fields and hillsides were covered with blue and purple and rose-colored flowers.
They bloomed along the highways and down the lanes. Bright patches lay around the schoolhouse and back of the church.
ルピナスの咲く春の小道を自転車に乗ったアリスが颯爽と走ります。

ISLAND BOY

Island Boy (Picture Puffins)

ぼくの島 バーバラ・クーニー 文と絵  掛川恭子訳 ほるぷ出版

主なキャラクター
マサイス

島に生まれ、島とともに過ごした人生。
アメリカ開拓時代の島を舞台に、一人の男の人生を詩情豊かに描いた作品です。
無人の島を開墾して住みついたのはチベッツ一家です。男女6人ずつ、合計12人の子どもに恵まれ、マサイスは年の離れた末っ子です。長じて船乗りになったマサイスは15年に渡る船上生活にピリオドを打ち生まれ育った島に戻ってきます。最後の航海で知り合った教師のハンナと結婚し、
3人の娘が生まれます。

自給自足の生活で子どもたちは大切な働き手です。チベッツ家の男の子は畑を耕し納屋や小屋を建てる力仕事で父親を手助け。マサイスの娘たちは海や山の恵みで料理を作り保存し、織物や編み物を身に付けます。自然とともに営む島の暮らしは親から子へ、そして孫へと四世代に渡って受け継がれてゆきます。

島の四季とさまざまに表情を変える海と空が淡い色彩で描かれ、ゆったりした時の流れを感じさせます。同じマサイスの名前を持つ孫がたたずむラストシーン。島とともに生きる“ISLAND BOY”スピリッツが小さな体を満たしているようです。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
And when the snow crusted over they climbed the hill and slid down from the red astrakhan tree to the fish house.
雪の斜面を滑り下りるチベッツ家の子どもたち。お母さんは「板に乗ればいいのに」って言うけれど“人間ソリ”の方が断然楽しそう。

OX-CART MAN

Ox-Cart Man (Picture Puffins)

にぐるまひいて ドナルド・ホール文  バーバラ・クーニー絵 もきかずこ訳 ほるぷ出版

主なキャラクター
農夫 妻 娘 息子

1年分の丹精を積み、男はOX-CART MANになる。
19世紀のアメリカ・ニューイングランド地方を舞台に、自然とともに生きる一家を描いた絵本です。山や森が色づく10月、農夫は牛に荷車をつなぎ、いよいよ町へ出発です。幌付きの荷車には家族が手作りした品々が積み込まれます。刈り取った羊毛、妻が織ったショール、娘が編んだ手袋、息子が作ったほうき、キャンドル、リネン、ジャガイモ、リンゴ、メイプルシュガー、ガチョウの羽毛など。これから10日間、農夫と牛は山を越え谷を抜けポーツマスをめざします。

町の市場で荷車の品はすべて売られました。空っぽの木箱も樽も荷車も、そして牛にも買い手がつきました。すべてをお金に替え、農夫は家族のための買い物をして来た道を一人戻ります。

詩人であるドナルド・ホールは淡々と農夫の日常を追い、その簡潔な描写が心地よいリズムをきざみます。抑制の効いた文を彩るバーバラ・クーニーの挿絵。メイン州に住みニューイングランドの自然に親しんだクーニーの温かなまなざしが、風景や人物の造形ににじみ出ています。手塩にかけた牛と別れる場面では交わす視線に万感の思いがこもっています。

荷車も牛も手放して身ひとつになったOX-CART MANが鮮烈な印象でした。1980年のコルデコット賞受賞作品です。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
and in March they tapped the sugar maple trees and boiled the sap down,
雪の残る早春、樹液を煮詰めてメイプルシロップ、メイプルシュガーを作ります。

Letting Swift River Go

Letting Swift River Go

みずうみにきえた村  ジェーン・ヨーレン 文  バーバラ・クーニー 絵  掛川恭子訳 ほるぷ出版

主なキャラクター
サリー・ジェーン

わたしのふるさとは湖底に眠る。
水底に沈む運命をたどる小さな町を、そこに生まれ育った少女サリー・ジェーンの目を通して描いた作品です。アメリカ・マサチューセッツ州のthe Quabbin Reservoir(クアビン貯水池)にまつわる実話に基づいています。作者のジェーン・ヨーレンが貯水池の近くに住んでいたときに新聞記事を読み、この物語の想を得たそうです。

詩人としても活躍するヨーレンは簡潔でリズミカルな筆致で牧歌的な暮らしを綴っていきます。
夏、川で魚釣り。墓地は格好の遊び場です。庭のメイプルの木の下で眠る夜。手元のガラス瓶を照らす蛍の光。雪の降り積もる冬。湖の氷を切り出します。家の中では1日中ストーブが燃え、夜は羽毛布団とキルトにくるまって。早春にはメイプルの樹液集め。

穏やかな暮らしは突然、断ち切られてしまいます。60マイル離れたボストンに水を供給するためにスウィフト川を堰き止めてダムを作り、川沿いの4つの町は水底に沈むことになったのです。

まず墓地の移転が始まり、次々に木が切り倒され、長年住み慣れた我が家が取り壊されていきます。人々の生活の痕跡をすべて消し去った更地で、ダムの造成が始まりました。

次の場面では一転、青い水をたたえた湖が出現してハッと息をのみます。ヨーレンの文章は水底に横たわる4つの町Dana・Enfield・Prescott・Greenwichへ捧げた鎮魂歌のようです。

成長したサリー・ジェーンは父とクアビン貯水池を訪れます。ボートに乗って、ありし日の故郷をしのぶシーンに万感の思いが込もり、胸に迫ってきます。そして、湖面に注がれていたまなざしが
そこから離れるとき、タイトルに込められた意味にハッと気づくのです。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
"You have to let them go, Sally Jane,"
she said to me.
so I did.
ビンに入れた蛍を放してあげなさいと、お母さん。この言葉はサリー・ジェーンの心にずっと
刻まれています。

ROXABOXEN

Roxaboxen

すてきな子どもたち アリス・マクレラン文 バーバラ・クーニー絵 北村太郎訳 ほるぷ出版

主なキャラクター
マリアン アナ・メイ フランシス ジーン チャールズ エレノア ジェイミー ポール 

子どもがつくった丘の上のパラダイス。
ROXABOXEN(ロクサボクスン)という風変わりなタイトルが興味をそそります。OXを重ねた綴りやその響きはまるでおまじないように物語に誘います。
Roxaboxenは子どもたちが遊び場にしている丘のことです。岩がごつごつしている何の変哲もない丘。サボテンやトゲのある植物が生えていて木箱があちこちに転がっています。でもそこは子どもたちにとって特別な場所なのです。石を並べて町並みを造りました。家や町役場ができ、パン屋とアイスクリーム店もオープン。墓地や刑務所だってあるんです。たまには男子VS女子の戦争も起こります。

ありふれた風景を特別な世界に変えるのは子どもの想像力。石ころ1つ棒きれ1本あれば遊び心が元気に動き出します。この絵本は作者であるアリス・マクレランの母マリアンの実体験から生まれました(登場人物のアナ・メイ、フランシス、ジーンはマリアンの姉妹)。2000年の春にはアリゾナ州・ユマ市にRoxaboxen Parkができました。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
But ah, if you had a horse, you could go as fast as the wind. There were no speed limits for horses, and you didn't have to stay on the roads.
棒にまたがれば疾走する馬に早変わり。歓声が聞こえてきそうです。

リンク

Emily

エミリー マイケル・ビダード文 バーバラ・クーニー絵  掛川恭子訳 ほるぷ出版

主なキャラクター
少女 エミリー

少女が出会った詩と詩人。
少女との交流を通して、19世紀のアメリカの詩人エミリー・ディキンソンの人物像をいきいきと浮かび上らせます。

少女が引っ越した先の向かいの屋敷に暮らす女性がエミリーです。彼女は20年も外に出ることなく人と交わることもしません。ある日、ドアの隙間から手紙が差し込まれました。中に入っていたのは押し花と短い手紙。エミリーからの招待でした。
どんなひとかな。どうして家に閉じこもっているのかな。そんな好奇心を抱く少女とエミリーが出会う場面はひときわ印象的です。詩をめぐる短いやりとりは深く心に刻まれます。交換した秘密のギフトはきっと、いつか...。

絵本の表紙に描かれた黄色い家はマサチューセッツ州アマーストにあるエミリーが生まれ育った屋敷です。現在は「エミリー・ディキンソン美術館」として公開されています。

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Barbara Cooneyバーバラ・クーニー)PROFILE
1917年~2000年/アメリカ・ニューヨーク州生まれ。アマチュアの画家だった母の影響で幼い頃から絵を描くのが好きだった。スミス大学で美術史を専攻し、ニューヨークのアートスチューデントリーグでエッチングとリトグラフを学ぶ。『Chanticleer and the Fox』(59年)と『Ox-Cart Man』(79年)でコルデコット賞を2度受賞。『Miss Rumphius』(83年)で全米図書賞を受賞。イラストレーター、作者として数多くの作品を残した。

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