400冊超の英語絵本の紹介。英語学習者、絵本好きの方におすすめです。

バージニア・リー・バートン

絵本作家 バージニア・リー・バートン

70年にもわたって愛され続けるバージニア・L・バートンの絵本。
主役は家や機関車、スチームシャベル。愛すべき彼らの姿が変わらぬ共感を誘います。

THE LITTLE HOUSE

The Little House

ちいさいおうち バージニア・リー・バートン作  石井桃子訳 岩波書店

主なキャラクター
リトルハウス

時代の荒波を生き抜いた小さな家の物語。
丘の上に建つ1軒の小さな家の物語です。のどかな田園の中でリトルハウスは幸せに暮らしています。時の流れとともに、周囲には道路ができ家が増えビルが建ち電車が走りどんどん変わっていきます。高層ビルの谷間でリトルハウスはひっそりとたたずみます。

表紙の円の中心に描かれたリトルハウスまるで微笑んでいるようです。ドアの両側の窓は2つの瞳、石段は唇。自然に囲まれた姿は幸せそう。都市化が進むにつれてその表情は厳しく悲しげになっていきます。40ページのどの見開きにも少しずつ違った表情のリトルハウスが描かれています。絵だけを追っていってもひとつの人生の喜びや悲しみが伝わってきます。
表紙にHISTORYならぬ「HER-STORY」と記しSHEで語られる家の歴史は、1人の女性の人生とも重なってきます。1942年の発売以来、世代を越えて読み継がれてきたロングセラーです。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
"This Little House shall never be sold for gold or silver and she will live to see our great-great grandchildren's great-great grandchildren living in her."
冒頭でリトルハウスを建てたひとの強い決意が語られています。

They tried the Little House here, and they tried her there.
Finally they saw a little hill in the middle of a field... and apple trees growing around.
"There," said the great-great-granddaughter,"that's just the place."
"Yes, it is, " said the Little House to herself.
野原の真ん中の小高い丘。周りにはリンゴの木。リトルハウス安住の地をついに見つけた!

CHOO CHOO

Choo Choo: The Story of a Little Engine Who Ran Away

いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう バージニア・リー・バートン作 
むらおかはなこ訳 福音館書店

主なキャラクター
機関車チューチュー 機関士のジム 助手のオーレイ 車掌のアーチボールド

逃亡機関車を連れ戻せ!汗と愛の追っかけ大作戦。
客車と貨物車と給炭車を引き連れて機関車チューチューは大きな町と小さな町を行ったり来たり。でもある日考えます。みんなのために働くのはもうウンザリ!1人ならもっと速いし楽だし、きれいなワタシは注目の的。チューチューは逃げ出します。
汽笛を響かせ鐘を鳴らし疾走する小さな機関車。チューチューを追う3人の男たち。チューチューの暴走をどうやって止めるのでしょう。

モノクロの絵本ですが躍動感と迫力いっぱいです。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
One day CHOO CHOO said to herself,"I am tired of pulling all these heavy coaches. I could go much faster and easier by myself, then all the people would stop and look at me, and they would say, "What a smart little engine! What a fast little engine! What a beautiful little engine! Just watch her go by herself!"
身軽になって注目を集める自分の姿を夢見るチューチュー。

MIKE MULLIGAN AND HIS STEAM SHOVEL

Mike Mulligan And His Steam Shovel (Read-Along Books)

マイク・マリガンとスチーム・ショベル バージニア・リー・バートン作 
石井桃子訳 童話館出版

主なキャラクター
マイク・マリガン スチームシャベルのメリー・アン

速さと腕に自信あり。山も地面も名コンビにお任せ!
マイク・マリガンの相棒はスチームシャベルのメリー・アン。大地や山や丘を掘って掘ってまた掘って、運河や鉄道や道路を造ってきました。そんな2人の前に立ちはだかったのがガソリンや電気、ディーゼルの最新シャベル。ついに仕事がなくなってしまいます。
新聞で新しい市役所建設の記事を読んだマイクは地下室を掘るべく街へ。「1日で掘ってみせる」と約束し、名コンビの仕事が始まります。掘って掘ってまた掘って...。いつの間にやら周囲は見物人でいっぱい。

最後に残った大問題。まるく収めた解決法に「お見事!」と拍手喝さいです。実はこのアイデアはある少年が考えたもの。本文にはバートンの謝辞が記されています。

移り変わる時代の中で、古き良きものに注ぐバートンの温かいまなざしがじんわり伝わってきます。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
Mike Mulligan was very proud of Mary Anne. He always said that she could dig as much in a day as a hundred men could dig in a week, but he had never been quite sure that this was true.
マイクにとってメリー・アンは百人力の頼もしさ、かな。

KATY AND THE BIG SNOW

Katy and the Big Snow board book

はたらきもののじょせつしゃけいてぃー バージニア・リー・バートン文と絵 
いしいももこ訳 福音館書店

主なキャラクター
ケイティ

大雪の我が街を救え!除雪車ケイティ出動!
ケイティは赤色のクローラー(無限軌道)トラクター。ジオポリス市で夏はブルドーザー、冬は除雪車として働きます。ある冬の朝、雨が雪に変わり、ついにはビルの2階まで積もってしまいました。街は一面の銀世界に。交通はストップし街の機能もマヒ状態です。そこでケイティの出番です。持ち前のパワーで道路の雪を取り除き、警察署、郵便局、駅、電話局、電力会社の復旧を助けます。

ページいっぱいに描かれた挿絵に注目です。冒頭でケイティのプロフィールを紹介。「55馬力」は
5頭の馬が11列に並びます。ジオポリス市の地図には役所や学校、駅、工場、農場など30カ所の建物が。バートン一家が暮らしていたマサチューセッツ州・グロウスターがモデルだそうです。
ケイティはこんなことができるの。ジオポリスはこんな街よ。やさしく語りかけるバートンの声が聞こえてくる気がします。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
Once when the steamroller fell in the pond Katy pulled it out.
池に落ちた蒸気ローラーもケイティにお任せ。

リンク

MAYBELLE THE CABLE CAR

坂の街のケーブルカーのメイベル バージニア・リー・バートン 文と絵
秋野翔一郎訳 童話館出版

ケーブルカーは街のお宝。
坂の多い街として知られるサンフランシスコ。坂を走るケーブルカーは観光客に大人気の街の名物です。その歴史は古く、1873年にまでさかのぼります。驚くべきことに現在も手動で運行されています。時代が変化し街が大きく発展していくなかで、このレトロな乗り物は存亡の危機に直面します。廃止するか否か、住民投票が実施されました。今も昔と変わらない姿でサンフランシスコの街を走るケーブルカーは、多くの市民の熱意と愛情あってこそですね。

本書はケーブルカーのメイベルを主人公に、その働きぶりや当時の市民運動を史実に基づき描いています。ステップまで乗客を乗せてメイベルが急な坂を上り、下ります。リンリン、ベルが鳴ります。バートンはサンフランシスコの美術学校に通っていて、ケーブルカーは身近なものでした。日々の実体験がいきいきとしたイラストと文章に活かされているのではないでしょうか。

CALICO THE WONDER HORSE
OR THE SAGA OF STEWY STINKER

Calico the Wonder Horse: Or the Saga of Stewy Stinker

名馬キャリコ  バージニア・リー・バートン作 せたていじ訳 岩波書店

主なキャラクター
キャリコ スティンカー ハンク 

賢馬VSお尋ね者のウエスタン漫画。
バートン作品の中で異彩を放つ西部劇のコミックです。カウボーイVSお尋ね者、ホールドアップあり疾走する馬車あり。上質なユーモアとアドベンチャーが随所に盛り込まれています。
主人公はウマのキャリコ。見目うるわしくはないけれど賢い頭脳と鋭い嗅覚を持ち、脚の速さは随一。相棒のハンクとは強い絆で結ばれています。ふたりが対決するのがスティンカー率いる悪党一味。キャリコは頭脳と鼻と脚でスティンカ―にぎゃふんといわせます。

白と黒で描かれたコマ割りのイラストはまるで切り絵のような趣です。紙は数種類のグリーン、ピンク、イエロー系を使い分け、テンポよく展開する物語を盛り上げています。異色作を描いた背景には、流行りの漫画本に夢中の息子に良い漫画を与えたいとのバートンの母心があったそうです。名前も目つきも性格もワルの折り紙付きのスティンカー(Stinker:臭いヤツ)も最後はもちろん大団円に加わります。

ぴっくあっぷ名シーン迷場面
Stewy Stinker drove the stagecoach down the narrow mountain road at a breakneck speed. Hank and Calico were fast behind and the stampede thundering after them.
山道を逃げるスティンカー、追うキャリコとハンク。その後に牛の大群が続きます。

LIFE STORY

Life Story

せいめいのれきし―地球上にせいめいがうまれたときからいままでのおはなし
バージニア・リー・バートン作 いしいももこ訳 岩波書店

地球と生物と人の壮大な歴史ショー。
とてつもない絵本があったものです。副題「THE STORY OF LIFE ON OUR EARTH FROM ITS BEGINNING UP TO NOW」とあるように、地球に生まれた生命の歴史を描いたなんともスケールの大きな物語です。バージニア・リー・バートンの細やかな心配りがすみずみまで行き届き、胸が熱くなりました。

全体の構成は芝居仕立てという独特の工夫がなされています。表紙をめくると、扉には幕が下りたステージと「LIFE STORY」の開演を待つ観客の姿が描かれています。続くプログラムは4ページにわたる目次。宇宙創世・地球誕生を描いたプロローグが天文学者の案内で幕を開け「LIFE STORY」の舞台は始まります。古生代から現代に至る全5幕は地質学者、古生物学者、歴史家、おばあさん、そしてバートン自身がそれぞれの年代のナレーターを務め、進行していきます。読者は観客の1人となって小さな舞台で繰り広げられる壮大な物語を楽しみます。

見開きの右に絵、左に説明の構成でテンポよく興味をつないでいきます。中生代から新生代を描いた2幕~3幕には恐竜やマンモスが闊歩して、恐竜好きにはたまりません。長いスペルの用語も多く出てきますが絵を見ているだけで十分に楽しめます。5幕はバートン夫妻と2人の息子が登場し、自然の中で営まれる家族の暮らしと歴史が語られます。

最終ページのエピローグでバートンは読者にメッセージを託します。
And now it is your Life Story
and it is you who play the leading role.
The stage is set, the time is now, and the place wherever you are.
Each passing second a new link in the endless chain of Time.

8年の歳月を費やし1962年に発表された本作はバートンの最後の作品となりました。


Virginia Lee Burtonバージニア・リー・バートン)PROFILE
1909年~1968年/アメリカ・マサチューセッツ州ニュートンセンター生まれ。カリフォルニア美術学校で絵画を学ぶ。1作目の絵本『CHOO CHOO』は長男アリスのために、2作目『Mike Mulligan and His Steam Shovel』は次男マイクのために書いた。『The Little House』でコルデコット賞を受賞。結婚後に住んだフォリー・コーブでフォリー・コーブ・デザイナーズという手工芸グループを立ち上げる。64年に来日している。

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